レーザクラッディングによるAZ91Dマグネシウム合金の表面改質

摘要

マグネシウム合金は，実用金属中最も軽く，比強度，比剛性に優れているという長所を持ち，その強度はアルミニウムにも匹敵する。しかも電磁遮蔽能，振動減衰能，リサイクル性にも優れるという特徴を持っている。そのため，軽量化を要求される自動車，航空宇宙機器などへのマグネシウム合金部品の採用が欧米を始めとして急激に増えつつある。 しかし,日本では経済性，信頼性，データ不足などの問題があり,大幅な採用にはまだ到っていないものの，自動車メーカの関心は非常に高く，今後の研究開発によるデータの蓄積が進むにつれて，応用は広がってゆくものと思われる。しかし，マグネシウムは化学的には実用金属中最も卑な金属であるため,接触腐食が生じやすく，また耐熱性,耐摩耗性に劣るため，使用環境が比較的穏やかな自動車の内装部品,たとえばシートフレーム，ドアフレーム，ステアリングホイールなどに制限されている。 今後さらなる軽量化を図るためには，厳しい環境下で使用されるパワートレイン系の重量部品たとえばエンジンブロック，ピストンなどへも適用可能なマグネシウム合金の開発が必要とされる。 しかし，マグネシウムそのものの性質を合金開発のみによってそれらの使用条件，たとえば高荷重負荷環境下における摩耗等に耐えられるようにするには限界があり，このような背景から，マグネシウム合金の表面改質技術の確立が強く求められている。