重金属汚染土壌の植物による浄化技術（ファイトレメディエーション）

摘要

多くの植物は、土壌中の各種元素を根によって吸収し利用して生長している。 地球上の全植物種は約25万ともいわれているが、これらのなかには有害な重金属を積極的に吸収する植物もある。このような植物は高集積植物（ハイパーアキュムレータ）と呼ばれている。 その高集積植物を活用して、土壌中の汚染物質を浄化しようという試みが近年、世界的に実施されている。 本稿では、重金属汚染土壌に対する植物による浄化技術（ファイトレメディエーション）の現状を、筆者らの取り組みを含めて紹介する。 各種公害が社会問題化した1970年代に、館川ら、田崎らによって土壌中のカドミウムを植物に吸収させることによって浄化することを目的とした世界的に見ても先駆的な研究がなされたことは、残念なことにあまり知られていない。 彼らの検討の結果、浄化目標に到達するまでの期間が長期に及ぶことなどから、その時点では利用不可能という評価がなされ、その後の20年間は事実上の空白期間となった。