匠の軌跡

摘要

大久保さんは1932（昭和7）年、5人兄弟の長男として左官職人の家に生まれた。 父君の大久保雅造氏は腕利きの左官だったが、終戦直後の動乱に巻き込まれ一家は生活に窮し、大久保さんは家計を助けるために中学2年で学校を辞め、大蔵省に給仕として雇われた。 「弟や妹の口に少しのご飯でも入れば良い」との思いで水道の水を飲み、昼食を抜きながら日夜を問わず働く日々が続いた。 しかし、大蔵省では「言葉では言えないほど」の悪辣ないびりに遭い、辞めざるを得なくなってしまう。