自動車生産における摩擦攪拌接合技術－超高張力鋼板の摩擦攪拌点接合

摘要

ここで紹介する摩擦攪拌点接合（Friction Spot Joining，以下FSJという）は，摩擦攪拌接合（FSW）における圧入過程を点接合に応用した接合方法であり，1990年代の後半から開発が進められた日本独自の接合技術である。FSJの基本原理は，回転させたツールと材料の間で発生する摩擦発熱で材料を軟化させ，ツール周りに塑性流動を起こさせることであり，この流動による上下板界面の混練や圧着によって一体化される。また，FSJは固相接合であるため接合品質が安定していることや，アルミニウム合金の接合では消費電力が抵抗スポット溶接の10分の1以下という特徴があり，2003年にはRX-8（マツダ株式会社殿）においてアルミニウム合金製ボンネットやドアに初めて適用された。現在，筆者らは超高張力鋼板および次世代の革新鋼板における溶接課題の解消を目的に，超高張力鋼のFSJ技術の確立を目指している。本稿では，FSJの基本的な特徴やその継手性能について述べるとともに，超高張力鋼板やNEDOの「革新的新構造材料等研究開発」における開発状況について紹介する。