バンカーC需要は200万kl台を回復硫黄分規制強化は市況を多少底上げ

摘要

上期のボンドバンカー（C重油）需要は実需ベースで215万klと集計され，震災直後のため16％近い前年割れに終わった前年同期を6．4％上回った。日本からの製品輸出量が回復しない状態でのプラスは好調な需要にみえるが，震災前の89％にすぎず，通常な状態には程遠い。上期のプラスは，輸入量が大幅に増えている原子力代替用の原油，LNG，石炭などのエネルギーが，比較的日本でゐ給油を優先している邦船に支えられていることにありそうだ。そのため，製品輸出環境がますます厳しくなりそうな下期は，日本積みのバンカー需要に息切れの懸念がある。今年はバンカーの硫黄分規制が強化された年で，規制強化が需給や市況に及ぼす影響が懸念されたが，年末年始の2カ月は市況に大きな変化が認められ，ある種の混乱が生じていたことをうかがわせている。しかし，その後はむしろ規制強化前より安定した市況が続いている。石油製品の内需は基本的にマイナス基調のため，本来は原油処理量の圧縮が求められる。しかし，実際には原発代替用の電力向けC重油需要が大幅に増えたことで,処理量は前年同期より多くなった。それにもかかわらず，C重油とりわけバンカーなどのHSC重油に付き物の供給過剰感は全く発生しなかった。その要因として，処理原油の銘柄変更や精製パターンの変更などによってC重油の生産得率を大きく引き上げ，C重油に傾斜した生産を可能にしたこと，電力向けのLSC重油については製品輸入への依存を高めたこと，バンカー向けHSC重油の保税輸入を極力抑えたこと，などが，上期の需給実績などから確認できた。