フェライト耐熱鋼の材質劣化挙動とクリープ破断延性の変化

摘要

焼戻しマルテンサイト組織を有する高強度フェライト耐熱鋼は，長時間域でのクリープ強度の大きな低下が問題となっている。 九島らは先に，改良9Cr-1Mo鋼の長時間列ープ変形に伴う材質劣化挙動を調べ，試料全面で均一に回復が進行している高応力·短時間破断材どは異なり，低芯力·長時間破断材では旧γ粒界近傍で優先的に回復が進行した細織が観察それ,そのような不均一回復が長時間クリープ強度を低下させる重要な因子であることを明らかにした。 また,このような長時間クリープ強度の大きな低下に対応して，クリープ破断延性も著しく低下する。 破断延性の低下は高温疲労特性の低下をも招くことから，高温構造部材の安全性·信頼性を維持するためには，長時間域でクリープ破断延性が低下する機構を解明することが極めて重要である。 そこで本研究では,高強度フェライト耐熱鋼のクリープ変形挙動と材質劣化機構をより詳細に解明するとともに，長時間域で破断延性が急激に低下する機構を解明することを目的として，クリープ変形に伴う組織の回復挙動と破断延性との関係について検討を行った。