HBV持続感染の機序-HBV持続感染にかかわる宿主側要因およびウイルス側要因-

摘要

B型肝炎ウイルス(HBV)が成人に感染した場合,大多数は急性肝炎を呈してウイルスが排除され,慢性化する頻度は1%以下と低いのに対し, 一方, 3歳以下の児へ感染した場合には高率に慢性化する.例えば, HBe抗原陽性の母親の出産の場合,適切な処置を施さなければ約90%の児がHBVキャリアになる.肝炎ウイルスが生体に感染すると,様々な免疫学的機序が協調して,ウイルスの増殖の抑制?ウイルス感染細胞の排除を行おうとする.ヒトにおける免疫応答を解析するために,末梢血単核球(PBMC)·肝浸潤リンパ球(LIL)を用いて,抗原特異的増殖応答の解析,細胞障害性T細胞(cytotoxic T cell: CTL)応答の解析,サイトカイン産生の測定によるヘルパーT細胞(Th)の機能解析などが行われている.本稿において,これらの手法を用いた研究結果に基づいて,肝炎ウイルスに対する免疫応答およびHBV持続感染にかかわる宿主側要因およびウイルス側要因について概説する.