ANC技術を用いた自動車車室内音のデザイン

摘要

アクティブノイズコントロール（ANC）は，音響学の分野では，きわめて昔からある概念と言えるが，ここ数年，注目される分野となってきており，ANCに関するいくつかのテキストが，出版されている。 この技術の基本的な考えは，減衰のターゲットとなるノイズに位相が180度異なる同一レベルの音を音響的に重畳することにある。 ANCは，望ましくない騒音を減衰させる技術として，長い間扱われてきたが，この技術は，減衰させるばかりでなく，ある目標とする音を生成するという技術にも適用可能である。 この任意の音を生成する技術は，アクティブノイズコントロールに対し，アクティブサウンドデザイン（ASD）と言い，目的とする音（ターゲットサウンド）を，ただ出力するのではなく，車室内音をモニタし，閉ループ制御を適用しながら，車室内音をターゲットのサウンドにする技術である。 制御の結果は，高い精度での再現性を有し，ターゲットサウンドレベルを元々の車室内音に対し，高くあるいは低くすることも可能である。 ASDの代表的なアプリケーションは，自動車のエンジンから放射されるサウンドのデザインに対してであり，実際の車のエンジンサウンドに関係なく任意のサウンドを生成することを可能にする。