近代土木遺産「平木橋」の移設保存への取り組み

摘要

平木橋のある兵庫県加古川市野口町水足（みずあし）地域は、瀬戸内海側に開けた沿岸部で気候が温暖であり、県下で降水量が最も少なく、年間1，100 mm程度である。当該地域は、古来より農業用水の確保に苦労してきた地域で、明治40年に灌漑対策として淡河川山田川疏水事業に参加した。平木橋は、疏水の最末端地域の一つである新田への導水を目的に、大正4年6月に完成した平木池（6ha）に送水するため、大正4年（1915年）9月に建設された石と煉瓦を組み合わせたアーチ形式の水路橋で希少価値があり、また、花崗岩の白と煉瓦の赤が華やかな美しさを表現していることから近代土木遺産として歴史的価値を有している橋である（写真1）。平木橋は、疏水の最末端にあったため、送水が満足に行われなかったことから数年間使われただけで、その後、当該地域の疏水組合からの脱退を契機に、昭和24年頃から放置されてきた。この平木橋が、兵庫県が整備を進めている「東播磨南北道路」（地域高規格道路）の建設予定地内に位置していることから、県はその取り扱いについて、学識経験者、地元住民等で構成する「平木橋保存検討委員会」を設置し、協議を重ねた結果、移設保存することに決定した。