アウトリガーの沈下による移動式クレーンの転倒防止(2)

摘要

移動式クレーンは普及が著しい一方で，災害も多く発生している．厚生労働省の統計によれば，クレーン等による休業4日以上の死傷者数は年間約3000人で推移しており，このうち移動式クレーンによるものは約800人にのぼる．移動式クレーンによる災害原因は，おおよそ次の2つのタイプに大別できる．1つは原因が構造的な損傷に見られるタイプであり，ワイヤロープの切断やジブの倒壊，ならびに機体の倒壊等がこれに属する．もう一つは原因がヒューマンエラーに見られるタイプである．激突や墜落ならびに狭圧による災害の多くは，誤操作や不注意に原因が見られ，ヒューマンエラーによる災害に属すると思われる．しかしながら，移動式クレーン災害には，上記のタイプに原因を分類することが困難な災害も発生しており，調査，研究が必要な課題も残されている．この課題の一つには，図1に示すような移動式クレーンの転倒災害があり，設置される支持地盤の不安定問題がある．移動式クレーンの設置地盤については，潜在的な危険性に対する技術的な安全対策の検討が必要である．本報告では，過去に発生した転倒災害の調査に基づいて，その地盤工学的な要因の分析結果を述べる．