思春期における親子間葛藤の生起要因－進化心理学に基づく要因間比較から

摘要

思春期には、親子間の葛藤（すなわち、親子間のコミュニケーションにおける軋轢）が生じやすくなると考えられている。しかしながら、近年の実証研究は、その葛藤の程度に非常に大きな個人差が存在することを明らかにしている。そこで本研究では進化心理学における適応的個人差の理論を援用しつつ、思春期の親子間葛藤の激しさの要因としての、幼児期と思春期という2つのライフステージが持つ重要性について比較検討した。その結果、思春期の親子間葛藤の激しさには幼児期の環境·経験が与える影響が大きいものの、思春期に多くの友人を持つことが親子間葛藤の防御因子として働く可能性が示された．