海浜堆積物の地中レーダ記録

摘要

九十九里浜および仙台平野での調査結果を例に，海浜堆積物の地中レーダ記録について紹介を行った．海浜堆積物の地中探査記録の解釈では，上でもあらかじめ説明したように，現在の海浜に見られる堆積過程や，露頭に見られる堆積物の一般的特徴を参考にしている．これまでのところ，海浜の前進によりできる海側傾斜の反射面の束，およびそれを所々切る下に凸の侵食面が，探査記録の解釈や意味付けのために最も重要な特徴となっている．これらは，前浜堆積物に共通する一般的な特徴にすぎず，各地の海浜堆積物の探査記録に見られる多様性については，あまり目を向けられていない．例えば，九十九里浜では前浜基底面を認めやすく，海面高度の指標として用いることができる一方，全体に海浜勾配が急な仙台では前浜から上部外浜にかけての侵食面が連続的になり，両者の境界がはっきりしないが，その原因については明らかではない．度々注目される下に凸の侵食面の成因としても，巨大地震に伴う海面上昇や津波，ストーム，堆積物供給の減少など複数があり，これらを各地域の背景や研究の目的に合わせ，悪く言えば場当たり的に，十分な検討がなく結論づけられている印象もある．現時点の理解は，成因ごとに侵食面を分類したり，侵食面のみを見て成因を特定したりできる，といったレベルには到達していない．巨大地震やハリケーンといった重要な現象に関連するだけに，十分な注意が必要である．このような問題もあるが，砂礫質で電波が減衰しにくく，堆積構造も明瞭な海浜堆積物にとって，地中レーダは相性の良い，有用な探査·研究手法である．