変態発熱を考慮した冷却評価技術－鋼材冷却の熱伝達特性の実験的評価

摘要

鉄鋼製造プロセスにおける圧延工程では，高温の鋼材や鋼板に水を噴射する冷却が行なわれている．高級鋼の代表である高張力鋼板の製造では，TMCP（Thermo-mechanical controlled processing）とよばれる温度を制御しながら圧延を行い（制御圧延），その後，急速に冷却して（制御冷却）鋼板の強度や靭性を大幅に高める技術が工業的には重要である．特に，その制御冷却では，急速な冷却が求められるが，鋼板は冷却される際，変態温度域まで冷却されると鋼の変態が始まって，鋼板内部から発熱が起こり，見かけ上冷却が弱まる，すなわち，冷却速度が遅くなる．特に変態が急激に起こる鋼中の［C］が高い，いわゆる高炭素鋼では，冷却しているにもかかわらず温度が上昇するような場合もある．このような現象が起こると所要の冷却速度が得られず，いわゆる焼きのあまい鋼となってしまうおそれがある．理想的には，鋼の変態の進行に応じて生じる変態発熱に呼応した冷却能力の調整を行なうことが求められる．そこで本研究は，変態モデルを導入して，変態の開始，変態の終了，およびその間の変態進行に応じて発生する変態熱を予測し，所要の冷却を実現することを目的とする．特に，簡便な方法で変態現象を捉えて，容易に実製造ラインで適用しやすい方法の開発を目指した．