動物運動の3次元解析－昆虫のはばたき飛行解析を対象として

摘要

昆虫は動物の総種類数のおよそ4分の3を占めていて，現在地球上で最も繁栄をとげている動物群であるといわれている．昆虫は，頭部，胸部，腹部の3部分に分かれ，頭部には感覚器官，胸部には運動器官，腹部には消化器官があり，異質的体節制が著しく発達していて，非常に経済的な構造をしている．このような昆虫を機械工学的な観点から眺めた場合，合理的な構造，様々な機能や機構を有する極めて優れた精密機械であるといえる．そのような事から，最近は昆虫の優れた機能·機構を解析究明して，その成果を積極的に工学技術に取り入れようとする気運が高まってきている．著者らも，これまで蚊やアブなどの双翅目昆虫の翅の凹凸表面形状の3次元計測と電子顕微鏡観察を行い，翅の飛行機能に関連する多くの形態学的な特徴を明らかにしてきた．さらに膜翅目昆虫の自由飛行解析を3次元的実験手法によって行い，スズメバチの後退上昇飛行や翅運動時の速度変動を明らかにした．そのようなことから，ここでは著者らの経験に基づいて昆虫の飛行など微小な生物の運動解析を2台の高速度ビデオカメラを用いて3次元的に解析する手法について簡単に解説するとともに若干の解析例を示すこととする．