気泡流を用いた氷中流出油回収装置の開発

摘要

筆者は以前本誌において、「氷海域における船舶の安全及び油流出事故対策」と題する解説記事を書かせていただいた。これは、氷の存在する海域である氷海域を航行する船舶の安全性の考え方とそれを担保するシステム、そして不幸にして事故等により原油等の流出が発生した場合の現象と対策についてその概要をとりまとめた文章であった。 この中で海上技術安全研究所（海技研）において研究開発を行っている気泡流を用いた氷海域用の油回収装置についてその一端を紹介したが、この度の海洋技術にかかわる混相流技術の特集にあたり、本装置について再び本小文を書かせていただく機会を得た。 海技研における本装置の研究開発は、回収原理の着想と小型模型を用いた検証実験に始まり、大型模型による研究を経て、装置の改良と性能の定量的把握そして実機の概念設計を目的とした現在の研究プロジェクトへと発展してきた。 現在行っている研究は、プロジェクトの中間年を迎えたところであり本装置の開発も現在進行形の段階であるが、以下では、これまでの研究の内容と結果を示すとともに現行プロジェクトについても一部その内容を盛り込んで、気泡流方式の氷海域用油回収装置の研究開発について述べてみたい。