術後所見から悪性高熱症が疑われた1症例

摘要

右手根骨骨折に対し，ターニケットを用いて固 定術が行われた。手術中は，軽度頻脈と呼気終末 二酸化炭素濃度の上昇以外には悪性高熱症を疑わ せる所見はなかったにもかかわらず，術後1日目 に上肢?下肢?咬筋の筋肉痛と茶褐色尿を認め，悪性高熱症(marignant hyperthermia ： MH)が術後に顕著化した症例を経験したので報告する。病棟帰室後，頸部冷却を開始し，体温は37.4°C から低下傾向であった。手術終了 4時間後には， 体温は36.7°C，心拍数は70-80beats ? min—1まで 改善した。手術終了後から軽度の嘔気を認めたが， 投薬はせず経過観察されていた。術後1日から体 幹部中心に上肢?下肢?咬筋に筋肉痛が出現し， 褐色尿を呈していることが術後2日目の麻酔科医の術後診察で判明した。