藤曽根排水機場と貞山堀（宮城県名取土地改良区)

摘要

日本史上に未曾有の大惨事をもたらした東日本大震 災については公的機関，報道機関をはじめあらゆる研 究，専門団体あるいは個人によって膨大な記録や分析 報告書が残されております。農業農村工学会において も震災直後に迅速に調査団を派遣されるなど，多くの 記録と調査報告書がァクセス可能であります。筆者の ような趣味の写真屋が入り込む余地はほとんどなくむ しろデータを利活用させてもらうのが良いと思ってい ます。また中途半端な奉仕などは寝食を犠牲にして生 活の再建や復興に取り組んでおられる被災者や関係局 の邪魔になるだけと遠慮していました。それでも東北 に二度在勤し，特別の思い入れがありますので機会が あれば被災，復興の状況を五感で感じ，記録とすべく 自分流の関心を持って行動してきました。この表紙写 真はそのような考えのもと，「閑上（ゆりあげ）の町も 貞山堀の防潮水門も仙台空港もいずれも津波で流され ているのに，名取地区の排水機場の上屋だけが残って いる，凄いものだ」と言う専門家の言葉に触発されて 撮れたものです。11日という月命日に合わせた訳ではありませんが2013年9月の同日，撮影地を訪れ案 内して貰いました。30力月目の名取平野はまったく 別の場所の光景のようで，がれきの撤去は大方終わつ ておりましたが,　見渡す限り腰高まである雑草に覆わ れていました。排水機場は機能的には全壊状態でも頑 張った上屋はポツリと孤立して残っており，表現ので きない悲しい光景でしたし，護岸は崩れているものの 何事もなかつたかのように水をたたえる貞山堀も異様 なたたずまいで，何か特別のパワー.スポットに入り込 んだ雰囲気で撮影できました。以下，貞山堀，名取耕 土と津波，排水機場の順に写真由来の概要をご紹介します。