日立製作所におけるパワーデバイス技術開発

摘要

近年，環境保全の観点からパワーエレクトロニクスの高効率，小型，軽量化に対する要望が強く，鉄道車両駆動用インバータ／コンバータについても，車載故の小型，軽量化要求がより強くなっている．パワーデバイスが寄与するテーマとしては，（1）動作の高周波化による周辺回路部品小型化（2）低損失，高温動作による冷却構造の簡素·小型化（3）モジュールパッケージの小型·軽量化（4）低ノイズ化がある．これらを実現する最新の技術として，デバイスでは，SiC（Silicon Carbide）材料を使ったデバイスの開発が進んでいる．SiCでは，その耐高電界性能から，高耐圧デバイス（1.7kV以上）では不可能であったユニポーラ構造の採用によるスイッチング損失の大幅低減さらにはビルトイン電圧のないリニアなオン抵抗特性から，実使用域である中小電流での導通損失を大幅に低減することが可能となる．また，SiCは高温での動作が可能となり，動作温度を高くすることにより冷却器の小型·軽量化に寄与できるという特徴を併せ持つ材料であり，Siに替わるデバイスとして各社開発を加速している．一方で，SiCデバイスを収納するパッケージ構造にも新技術の開発が必要であり，高周波化暗に生じる波形振動現象の抑制，高温動作の繰り返しによる温度サイクル寿命の向上熱抵抗の低減等がある．日立では，①高性能SiCデバイス，②低内部インダクタンス小型軽量パッケージ，③焼結金属接続による高温度サイクル耐量，を中心に技術開発を進めており，機器の最適化に寄与することで低炭素社会の実現に貢献してゆく．