ハイブリッド電車のパワーフロー制御－架線集電と車載蓄電のハイブリッド化の実現

摘要

ハイブリッド電車は，架線等外部電源からの集電と車載の蓄電装置からの放電を同時に行なうことで駆動パワーを供給し，ブレーキ時には運動エネルギーや位置エネルギーを電気エネルギーに変換して架線等外部電源への返還と車載蓄電装置への充電を同時に行なう機能を持つ電車である．返還または蓄電した回生エネルギーは他車または自車で再利用することが可能となる．つまり架線下を走る電車に蓄電装置を搭載することにより，架線電圧低下防止，回生絞込や回生失効の抑制または防止，高速域の力行および回生パワーの増大，き電系容量増大防止やピークカット，勾配でのパワーアシスト，架線レス走行や電化非電化乗入れ走行，駅停車中の急速充電や車庫等留置中の夜間電力による蓄電装置充電など，様々な用途展開が可能となる．効用として，主に省エネ，回生ブレーキ信頼度向上，磨耗部品や熱劣化部品の保守軽減，運用柔軟化と旅客サービス向上，景観向上，路線延伸の容易化などが挙げられる．ハイブリッド技術の基幹思想は回生ブレーキの有効利用にあり，ハイブリッド電車実現のためには，蓄電装置の選定と搭載量の決定，ハイブリッド化回路構成，充放電タイミングとその量を規定するエネルギーマネジメント，それを実現するためのパワー·エネルギーフロー制御アルゴリズムといった要素が不可欠である．上記要素について，机上の検討のみではなく実際に開発と試験を行った結果を紹介する．なお，補機の省エネ技術については触れていないが，ハイブリッド制御の特殊な場合である架線レス走行のためには，空調を始めとした補機の省エネ化をこそ真剣に検討する必要がある．現状ではまだ架線から無尽蔵にエネルギーを取れることを前提とした設計であり，それを改めることも，電車への車載蓄電検討の中から見出されてきた技術課題である．これについては別途の課題とする．