西武6000系更新車におけるフルSiC適用主回路システムの省エネ検証成果について

摘要

低損失·高温動作の特徴を持ったSiC（シリコンカーバイド）は，パワー半導体の材料としてSi（シリコン）に代わるキーデバイスである．SiCをダイオード側に適用したHybrid-SiCパワーモジュールを鉄道車両用主回路システムに採用することにより，電力回生ブレーキ領域の拡大，高周波スイッチングによるモーター損失の低減など，主回路システム全体としての省エネ化が実現されてきている．フルSiC素子は，ダイオードだけでなくスイッチング素子にもSiCを適用した3300V／1500A 定格の大容量SiCパワーモジュールのことで，装置の小型·軽量化が可能となり，大容量化による更なる省エネ効果が可能となる．また，高効率全閉形誘導電動機は，SiCパワーモジュールに最適化した低損失材料の採用と電磁界解析を活用した損失設計により，従来開放形モーター比で高調波損失と基本波損失50%低減が可能となり，省エネ効果が期待できる．本稿では，フルSiC素子と，高効率全閉形誘導電動機を適用した西武6000系更新車において，GTO素子と，かご形三相誘導電動機を適用した西武6000系既存車との省エネ比較検証を実施した結果を紹介する．運用実績で39%の消費電力を削減し，装置の小型·軽量化により車両の改造コストが低減できた．以降に効果の確認方法と成果を示す．