プラスチック加工における微細転写性

摘要

プラスチック材料の表面に微細形状を転写させる技術は，組立て工程を減らすことができるなど，比較的安価に機能を付与することができるため最近特に注目されている．しかし，プラスチックの転写性の問題は金属とは違い粘弾性特性の関係から複雑で，型通りに成形できないのが現状である．光学部品の成形に用いられる表面に微細形状を有する金型は製作費が非常に高価であるため，成形品全体の成形性のみではなく，その表面微細形状の転写性についても金型設計の段階で予測できることが重要であるが，転写は金型内で生じる現象であり，また，転写すべき形状は微細であるため転写のプロセスはよく把握できていないのが現状である．イオンエッチングやLIGAプロセスにより金型作製技術が急速に向上してきたため，より深く，より微細な形状を創成することが可能になった．さらに応用範囲が拡大することが予想されるため，この転写現象の解明は急務になっている．しかし，転写の問題に関しては金型温度を高く設定することで対症療法的に解決されることが多く，樹脂材料の物性等についてはあまり報告されないのが実状である．そこで，本稿では様々な形状の転写特性についての実験的検討および転写機構について紹介する．