ポリブチレンテレフクレート／熱可塑性ポリエステルエラストマーのブレンド系における構造と物性

摘要

PBTやTPCのホモポリマーについての構造·物性に関する報告例は多く，射出成形品やフィルムについて基本組成や高次構造に関する研究がなされている．特に筆者らはTPCのハードセグメントとソフトセグメントの組成比の異なるフィルム状試料について，延伸に伴うハードセグメントPBTの結晶転移や球晶弾性体などの挙動を報告してきた．ここで得られた知見は，構造や変形挙動に顕著な組成比依存性が現れ，ハードセグメント長さの有限性（重合段階で決まるシークエンス長）が大きな支配要因になっていることであった．こうした有限性による影響は，弾性繊維に用いられるマルチブロック共重合体であるセグメントポリウレタンウレア弾性体においてもよく知られており，一般的にハードセグメント長さの有限性がブレンド系にどう影響するかは工業的にも学術的にも興味あるところである．新たな機能性樹脂として期待の大きいPBT／TPCブレンド系ポリマーの基本特性を理解するためにも解明しておきたい課題の一つとして挙げられる．本研究は，PBTとTPCのブレンドに関する基礎挙動を系統的に調べたもので，同一成分（PBT）を有する複合系においてどのような影響が構造や物性に現れるかについて報告する．