プラスチック成形加工の最近の研究動向：計測技術－“流動場直接観察”による高分子の流動場結晶化メカニズム

摘要

高分子の場合，融液構造は外場により著しく影響を受ける．高分子融液に異方性の強い外場（伸長·せん断流動など）を与えた場合，高分子鎖は引き伸ばされて配向融液(oriented melt)が形成されると考えられる．一方，外場のない「静置場」の場合，高分子鎖はランダムコイルになり，等方融液(isotropic melt)が形成される．融液構造は，結晶化速度や結晶化度及び配向，モルフォロジー，高次構造形成などの融液結晶化挙動を著しく支配すると考えられる．例えば異方性の強い流動場結晶化の場合，Oriented meltから「配向結晶」が，静置場結晶化の場合，isotropic meltからは球晶が生成すると考えられるが前者は実験的に検証されていない．成形加工において，流動場の結晶化挙動は機械的特性や耐熱性などの結晶性高分子材料特性に著しく影響する．よって成形加工にとって高分子の流動場直接観察による流動場結晶化の研究は重要であり，1960年代後半から盛んに行われてきた．流動場結晶化の顕微鏡等による直接観察を行うために，様々な計測機器が工夫されてきた．例えば平行平板型，回転板型，押し出し型，fiber-pull out型，二重円筒型装置などである．この中で著者の興味をひいたものを歴史的に総括するために，少し古い文献も含めて簡単に紹介する．興味ある方はぜひ文献を直接ご覧いただきたい．