タンザニアの山地農村の屋敷地にみられる多様な作付様式の成立要因 一ウルダル山塊東側斜面キポグヮ村の事例一

摘要

【緒言】ウルグル山塊（2646m)は、インド洋に面したタンザニア最大の町ダルエスサラームか ら約200km内陸に位置し、南北に連なる2000m級の山々がその主稜線を形成している。気象は 主稜線をはさんで大きく異なり、西側はやや乾燥するが、東側斜面は一年を通して雨が降り、湿 潤な環境が広がる。山塊の東側斜面に位置する調査村キボグヮは、標高600m-1300mに展開し、 屋敷地と畑地とがその全域に分布している。このような気象および地形的条件が、乾燥、半乾燥 地帯が国土の大半を占めるタンザニアにあって、多くの熱帯果樹や香辛料作物を産する希有な農 業生態系を作り出している。この山塊の農村の出身者はダルエスサラームや山の北側に位置する モロゴロ市に彼らのコミュニティを形成して生活しており、農村で暮らす人も町とを結ぶ人的な ネットワークを伝って、頻繁に町にアクセスしている。調査村は山塊の中でも辺境にあり、最寄 の都市までバスで約4時間、さらに、徒歩で約2時間を要するが、町や市場の動向に対して敏感 である。樹木作物の多くは、ゴミ捨て場を意味するゾaかかと呼ばれるホームガーデンに栽植され、 多層的な空間利用を伴う叢^^的景観を形成している。本研究では、ゾ'aゾa^にみられる多様な作付 様式が生み出されている要因を作物の種類やそれぞれの形態の違い、標高によって異なる作付け 作物の種類などから考察することを目的とする。