鹿児島県笠沙町崎ノ山の造成藻場の維持-拡大における砂の薄層被覆の役割

摘要

ゥ二等による食圧が高い磯焼け海域において藻場を造 成するためには；植食動物の駆除または網等による防除が不可欠であると考えられてきた。しかし；1999年，鹿 児島県と笠沙町（現南さつま市）は，ゥ二等の高密度に 生息する磯焼け海域において，コンクリ一トブロックと 複数種のホンダヮラ類の母藻を用いた藻場造成試験を浅所で実施し，その試験地の一つである崎ノ山沿岸では， ホンダワラ類をプロック上に持続的に生育させるだけでなく，周辺の岩礁にも拡大させる（2005年に約2ha)こ とに成功した。それらの藻場は，1996年まではその周 辺域ではみられなかった南方系ホンダワラ類のフタェモ クSargassum duplicatum (当時はフタェヒイラギモク S. ilicifolium var. conduplicatumと同j￡Jが優占する中に在来種のャツマタモク5S.patens等が疎生する群落で，最 盛期の2006年には高さ力2mほどにも達する林冠を形成 した。この藻場は，異常高水温になった2007年（藻場ブ ロックでの夏季最高日平均水温で2003-2009年の平均よ り1.2°C高い31.5°C)に著しく衰退し，それ以降は小型 (<0.5m)のフタエモクが疎生する状態に陥ったが，5 年以上もの間，ほとんど管理することなく，藻場が維持， 拡大したことは注目すべき事例であり，また謎の多い現 象でもあった。2005-2010年，著者らはその解明を目指 して様々な角度からの調査研究を行ってきた。