高密度ェゾシ力個体群が植生に与える影響と植生回復の目標一洞爺湖中島の植生モニタリングからわかったこと一

摘要

ェゾシ力の個体数の増加に伴う農林業被害は、1990 年代の始め頃から北海道東部地域で顕著になってきた (前田一歩園財団1993)。東部地域では、1997年以P每、 ェゾシ力の緊急減少措置が実施され、一旦減少したが再 び増加し、北海道西部地域では一貫して増加している（北 海道環境生活部2007)。その結果、農林業被害だけで なく、自然生態系への影響が、知床半島や日高地方、タ 張山地などで深刻になっている。これに先立って、洞爺湖中島では1980年頃からェゾ シカによる森林被害が発生し、植生乇ニタリングが行わ れてきた（前田一歩園財団1987、北海道環境科学研究 センタ一1997)。このモニタリングの結果、ェゾシ力は、 餌不足になっても落葉などそれまであまり利用しなかつ たえさ資源に転換して高密度を維持すること（Miyaki and Kaji, 2004),生息地の植物相を大きく変え（助野-宮木2007)、森林は比較的長期間維持されるが、台風 による風倒との複合によつて森林の荒廃が進むことなど が明らかになつてきた。同様な現象が各地で生じている ことが考えられ、対策が急務である。涓爺湖中島での結 果は、森林とシ力の管理を考える上で参考になると思わ れる。