蝸牛遅延に基づいた電子音響透かし法を利用した音声信号の改ざん検出の検討

摘要

近年，マルチメディア情報，特にディジタル音響信号·音声信号の高機能編集（修正·加工されたことを知覚できないような編集機能）が可能になりつつあるが，その技術を悪用した情報改ざんといった重要な社会問題が起こりはじめている．フラジャイル電子音響透かしは，オリジナルの音信号の改ざん検出に応用可能な技術である．著者らは，これまでに，蝸牛遅延に基づいた知覚不可能な電子音響透かし法を提案した．本稿では，リサンプリングや情報圧縮，音声符号化·復号化といった悪意のない情報処理に対する頑健性と，情報改ざんといった悪意ある情報処理（攻撃）に対する脆弱性を検討することで，提案法がフラジャイル電子音響透かしとしてどのように発展可能であるか検討した．ここでは，三つの客観評価（PESQ，LSD，ビット検出率），音声符号·復号化に対する頑健性の評価，悪意ある攻撃に対する脆弱性の評価を行うことで，提案法による音声の情報改ざん検出を評価した．その結果，提案法が改ざんを受けた場所だけでなく改ざんの様態まで検出できること考明らかにした．