人体頭部近傍に置かれた有限EBG基板上ダイポールアンテナの特性解析

摘要

携帯電話など無線通信の急速な普及に伴い，電波の人体防護に関心が寄せられている．電波ばく露の評価指標として比吸収率（SAR：Specific Absorption Rate）が用いられている．国際非電離放射線防護委員会（ICNIPR）ガイドラインあるいはIEEE／ICES規格によれば，携帯電話等の局所ばく露に対する指標として局所SARを用いている．このため，局所SARを低減する技術に関して多くの報告がなされている．その一つとしてElectromagnetic Band-Gap（EBG）構造を基板としたアンテナによるSARの低減例が報告されている．本稿では，第四世代無線通信システムが用いられる3.5GHz帯においてSARを低減可能なアンテナの設計を目指し，パッチ数が異なる有限EBG基板上ダイポーソレアンテナの特性を解析した．主な数値結果として，パッチ数を減らすにつれて共振周波数が高くなることがわかった．また，簡易的な立方体モデル解析では，PEC基板上アンテナと比較して，EBG基板を用いることによりSARの低減が確認できた．詳細頭部モデル解析では，20，24枚のパッチを有するEBG 基板上アンテナによるSARは，12，16枚のパッチを有するEBG基板上アンテナによるSARに比べて16％低減することがわかった．また，アンテナの動作帯域（|S_(11)|＞10dB，帯域幅3.8-4.5％）におけるSARのばらつきは，5％から35％変化することがわかった．