需要回復も円高進行，原材料価格高騰と値決め改悪問題で先行き不透明感増す鉄鋼業界

摘要

鉄鋼業界を取り巻く事業環境は，昨年初の激減状態から，とくに自動車の在庫調整が完了した夏場を境にして徐々に減産緩和の動きが広がり，下期に入り生産回復が本格化してきた．この背景の一つに中国や東アジア向け鋼材輸出の急回復もある．この結果，粗鋼生産は，09年末には08年前半のピークに比べて約9割程度まで回復している，こうした状況を背景に，09年度中間期で大幅赤学決算となった鉄鋼大手も，適期決算でば収益改善を見込まれるところまで回復傾向を示している．しかし，建築を申′むに自動車を除く国内の鉄鋼需要は依然として低迷．業種による景気回復のまだら模様が顕在化するなど今年の見通しも，未だ不透明感が残り，鉄鋼大事では慎重に先行きを見極めようとしている．加えて，鉄鉱石や石炭など原材料価格が再び高騰．更に年1回だった山元との原料価格交渉が叩方的に四半期ごとに決められるなど，かつてない原料問題の深刻化に直面している．その中で鉄鋼各社では鋼材価格値上げを含めた対応策に迫られているが，次第に取り巻く環境の厳しさが増している。