チェックポイントを制御するキナーゼ群

摘要

真核生物は生命を維持するために厳密に遺伝情報を複製して娘細胞に伝達する．この事象は緻密で合理性に富む機構により制御されている．真核細胞はサイクリン-サイクリン依存性キナーゼ（CDK）複合体の時期特異的活性化により，細胞周期を正確に進行させている．チェックポイント機構はDNAの構造異常などを感知し，迅速に様々な因子を活性化し，最終的にサイクリン-CDK複合体の活性を抑制することにより，細胞周期を停止させる．このシグナル伝達は主にタンパク質リン酸化カスケード反応により制御され，いったん異常が認識されると情報が伝達，変換され短時間に細胞が応答する．本稿では，チェックポイント機構の中心的な役割を担うキナーゼ群である，ATM，ATR，Chk1，Chk2を中心に，哺乳動物細胞における細胞周期チェックポイント機構について，最新の知見を踏まえながら解説する．