建部賢弘の啓と考えられる『弧背截約集』と『弧背率』·『弧背術』の関係－建部賢弘の元禄時代と享保時代の円埋の研究－

摘要

筆者は今年（2005年）の1月に建部賢弘（1664～1739）の著と考えられる『弧背截　 約集』上·中·下と『弧背率乱『弧背密術』上·下という3種の写本をある古番店より入手した。 このうち．『弧背戟約集』については建部資弘の薯としてまったく知られていなかったばかりでなく，和算啓としてもその存在すら聞いたことがなかったものである。 これらの入手の経緯や建部賢弘の着である根拠などについては，すでに拙稿r建部賢弘の著と考えられる『弧背載約集』について」（『数学史研究』182号，（2005年），1-39頁，以下では「前稿」と記す）に記した。 『弧背率』は宮城県立国書館，伊逹文庫蔵，請求番号RDO90／セ5／474·164の『弧背率』という写本の内容とほとんど同じで，『弧背密術』は宮城県立図番錦，伊逹文庫蔵，請求番号KDO90作5〝74·3郎の『弧背率音』という写本とほぼ同じである。 そして，『弧背術』上·下（日本学士院蔵，請求番号8898）とも概ね同じである。 これら3事が同時に発見されたことは意味がある。 本橋では，前稀と重複するところもあるが，まず『弧背裁約集』を建都賢弘の者とする主な根拠を簡単に説明し，それから『弧背戟約集』と『弧背率』，『弧背術』上·下（日本学士院蔵，請求番号も8898など）または『弧背密術』上·下（『弧背律』と細部では違いがあるが．本稿で扱う範囲ではそのことは彫啓しない）の髄備について述べることにしたい。