下水道汚泥灰から高効率リン回収法の開発と重金属除去

摘要

1.はじめに最近,地球温暖化問題を改善するための液体バイオ燃料(バイオエタノ一ル,バイオデイ一ゼル)用穀物の増産,中国やインド等の新興国の食生活の変化にょる飼料用穀物の増産,さらに,発展途上国の人口増加にょる食糧用穀物の増産が求められている.このょうな穀物増産には,大量の肥料が必要となるが,肥料の3大成分中でも資源の量が少なく,産出地も偏在しているリンを確保することが最大の難点になっている.リン系肥料の原料になるリン鉱石の価格はリンの主要原産国の輸出規制もあって,2008年のリンの取引価格は2005年の取引価格と比ベ,約4倍にも跳ね上がっている~(1)).国内にリン鉱山がない日本では,リンの全量を輸入に頼っており,長期的でかっ安定的なリン資源の確保が急務になっている~(2)).一方,国内では大量に排出される汚泥燃焼灰の処理が埋め立て地の不足で処理困難な状況になっている.幸い,汚泥をバイオマス燃料として利用した後に得られる汚泥灰にはリン鉱石に相当する15?30% のリンを含んでおり~(3’4)),)そのリンを回収できれば,汚泥灰は廃棄物から資源になる.現在,この分野では多くの研究がなされていて,実プロセスも動いているが,汚泥灰からリン溶出率が低いことに起因する低リン回収率の問題のため,経済性のあるプロセスとはいえない.そこでわれわれの研究では,汚泥灰に含まれているリンの溶出率を上げ,リン資源を高回収率で回収するリン回収プロセスの開発,さらに回収リンをそのまま肥料として利用可能にするための重金属を除去する方法の開発を行っている.すなわち,経済性あるリン資源の国内確保と循環社会の構築を目指している.