極地·寒冷域·僻地の気象観測

摘要

アムンセンが人類で初めて南極点に到達したのは1911年である　 そのアムンセンに先を越されたスコットの極点旅行を記録したチェリー·ガラード1）は，その著書「世界最悪の旅」の中で，スコットの極点旅行が単なる冒険でなく，科学的探検を目的としたことを強調している　 当時の極域探検でルート上での気象観測は天測による位置決定と共に重要な探検のプロセスかつ目的そのものであったようだ．さて，極地での組織的な気象観測が行われるようになったのは，1958年の国際地球観測年より少し前任からではないだろうか．Liljequist2）は南極において1949－1952年の期間に様々な放射観測を行い，積雪面上における短波·長波放射収支に関する基本的な知識を得ている．例えば，雪氷面上で晴天から曇天になるとアルベドが増加する理由は，7向き日射量の波長分布の変化が関係していることを既に指摘している　 その後，南極のように厳しい条件下でも精密な放射観測が行われ，Yamanou－chi3）は日射計の入射角依存性を垣連日射計のデータを用いて補正し，アルベドや下向きフラックスの振る舞いについて定量的な知見を得ている．現在では極域と言えども相当精密な観測を行う必要がある．