スプライン穴付き歯車の押出し成形

摘要

動力伝達用歯車の大部分は切削加工により製作されてきた．切削加工法では大量の切屑が出る，成形時間が長い等コスト削減の障害になるとの指摘がある．それらの問題点を解決する方法として，歯車の塑性加工の成形に関する研究が行われ種々なる方法が提案され一部では実用化されている．著者らの提案した押出し成形法は，素材の逃げ道が確保され成形中の断面減少率が一定で，前報で報告したように他の塑性加工法に比較し，冷間加工法としては型に作用する面圧が低く，軸方向長さに制限が少なく，長い成形品も得ることが可能である等の有為性がある．前報で得られた成形品は丸穴を有する平歯車，はすば歯車であった．実用に供するためには，穴部分に軸とはまりあい回転を伝達するためスプライン，セレーション，キー溝等の後加工が必要となる．外歯である歯車と内歯であるスプライン穴とを同時成形することができれば，工程数を減少させ成形コストを大幅に削減することが可能になる．一工程でスプライン穴付き歯車成形の研究は少なく大賀らの研究のほか見られない．そこで本研究では押出しにより平歯車の外歯部分とスプライン穴とを同時に成形し，一工程でスプライン穴をもつ平歯車を得ることを目的とした．低炭素鋼試料（S15C）を用いて成形に必要な基礎的資料を実験により求めた．