競争·同調·社会的促進

摘要

神経経済学はしばしば，古典的な最適採餌理論に依拠してきた．これは1頭の採餌者だけを考え，「その利益を最大にする決定（最適な決定）は何か」を問うものであった．しかし，なんらかのシナジー効果があれば群れが形作られる．さらに配分可能な餌なら，群れの中の各個体はproducer（生産者）とscrounger（掠奪者）という2つの戦術に分化する．ここで単純な分配則を仮定すると，採餌決定について以下のような予想が生まれる．社会採餌は資源競争を介して（1）選択衝動性を克進し，（2）エフォート投資を元進するとともに，（3）個体の運動を同調させる．その際，長期的な見通しや予測，群れ全体を統括する情報センターなどを仮定する必要はないし，個体は最適性を実現できない．局所的な相互作用があるならば，各採餌者がその自己の利益の逐次改善を近視眼的に追及する限り，群れには様々な行動特性の共有と同調が創成する．この総説では，広くみられる社会採餌について，その微視的なプロセスを整理したい．集団の巨視的な挙動を実現するにあたって，個体がいかなる行動特性を備えているか，これを検討する．さらにヒヨコを対象とした単純な実験（行動と神経科学）によって得られた知見を紹介し，社会採餌行動を特徴づける要因を具体的に示したい．