WC-Co超微粒超硬合金の焼結体表面におけるCo富有層の生成条件

摘要

VCやCr{sub}3C{sub}2などの粒成長抑制剤を添加した超微粒超硬合金や一般の超硬合金については，合金組成や焼結条件に依存して焼結体表面の色調が白色となる場合や灰色となる場合があることは製造現場において良く知られている．しかし，この現象に関する報文はこれまで見当たらない様である．そこで2，3の超硬合金の焼結体表面をSEM観察とXMA分析したところ，白色となるのは焼結体表面の大部分がCoを主成分とする薄層（Co富有層と呼称）で覆われている場合であり，灰色となるのは富有層によってほとんど覆われていない場合であることが分かった．Co富有層の生成の有無により，このように焼結体の色調が変わるばかりでなく，場合によっては焼結体表面の研削·研磨条件を変えなければならないこともある．そこで，Co富有層の生成の有無や形態は，超硬合金の生産における品質管理または加工工程において支障を来すことがあるが，その生成の有無と諸条件との関係は不明である．本論文では，精密部材（寸法精度の高い，高品質のマイクロ部品）用の加工工具用材料として最近重要視されている超微粒超硬合金について，Co富有層の生成の有無や形態に及ぼす合金組成と焼結条件の影響を定量的に調べ，Co富有層が生成しない焼結条件を探索した．