圧電薄膜の研究開発の現状とマルチフェロイクス材料への展開

摘要

圧電体はその特徴的な性質のため，薄膜化して微小なアクチュエータ·センサに応用したいとの要望は以前から存在していた．最近，薄膜作製技術の進歩に伴う圧電薄膜の特性向上と，微細加工技術との組み合わせにより，圧電薄膜素子の実用化が現実のものになりつつある．筆者らも化学溶液法を用いて作製した，バルクと同等の圧電特性を有するPZT膜を用いて，構造体ヘルスモニタリング用の小型センサや，100MHz以上の帯域を有する小型超音波発振子の開発を進めている．また，世界中で数多くの企業が圧電薄膜の研究開発を進めており，今後様々な電子器機に圧電薄膜を利用した素子が組み込まれると思われる．それに伴い，圧電薄膜を利用した積層薄膜構造構築によるマルチフェロイクス材料の研究も，新たな展望が開けるものと期待している．