ナノ組織解析の意義

摘要

金属材料は強度と靭性を兼ね備えるので構造材料として最も多用されている工業材料であり，金属特有の電気伝導性や強磁性を活用した機能材料としても工業材料中重要な地位を占めている．これらの特性は製造プロセスにより制御される微細組織によって大きく変化する。微細組織はそれを構成する相とそれらの形態·サイズ·組成によって定義され微細組織を正確に評価するためには構成相の構造と組成を同定し，それらがどのような形態で共存しているかを表現しなければならない．金属材料の特性はこのような微細組織によって様々に変化するので，金属材料の近代科学はSorbyが1863年に鉄鋼材料の微細組織を光学顕微鏡で観察することから始まった．それにより，金属材料の特性の向上は微細組織を最適化することによって可能であることが理解されるようになった。 このように，必要とされる特性を発現するための最適な微細組織を材料科学的に予測し，そのような組織をプロセス条件を最適化していくことで実現することが金属材料開発の正攻法である．