たたら製鉄の技術論（1）'たたら'との出会い

摘要

たたら製鉄は我が国の伝統的な製鉄法である。 高さ1.2mの箱形炉の炉下部から空気を吹き込み，木炭を燃焼させて砂鉄を還元し銑鉄を製造した。 その銑鉄を脱炭して得た鋼は加工性や鍛接性，耐食性に優れており，日本刀はたたら製鉄で作った鋼でしか造れない。 鉄と炭素だけからなる合金鋼の優秀な性質が注目されるばかりでなく，たたら製鉄は粉鉱石から銑鉄を製造する方法としては世界で唯一の商用炉であった。 たたら製鉄の特徴は，現行の高炉と比較すると，溶銑温度が200℃低い1350℃であり，羽口近傍の酸素分圧が4桁大きい10~(-12)atm程度である。 このためSiO_2やMnO，TiO_2は還元されないので不純物金属元素として銑鉄に入らない。 リンや硫黄も高炉銑より1桁低い濃度である。さらに粒径が0.5mm程度の粉鉱石なので還元·吸炭速度は速く，砂鉄装入から銑鉄生成までが約40分である。 高炉では約6時間かかるのでたたら製鉄はいわば高速製鉄法である（写真1）。