明治期後半に築造された東京湾第二海堡の鋼材分析

摘要

第二海堡は明治期に東京湾要塞の一つとして築造され，人工の要塞島や砲台跡などが残存している土木遺構であり，千葉県埋蔵物文化財包蔵地に指定されている．現在は，灯台や航路監視施設が配置され，東京湾中央航路を航行する船舶の安全を監視する島として利用されている（写真1）．本海堡は明治22年（1889）に着工し西洋の最先端土木技術を取り入れた土木構造物で，建設材料は，石材·煉瓦·コンクリートが使用されいくつかの構造物には，アングル，鉄筋，ボルト·ナット，繋船柱などの鋼材が確認されている．今回，本海生で使用された鋼材を調査し，残された鉄筋や吊金具などから試料を採取した．これらの鋼材は，日本古来の鉄や海外からの輸入品である可能性と，明治期後半に稼働した官営八幡製鉄所等の国内製品の可能性が考えられた．本稿では，第二海堡の建設時期と国内鉄鋼生産量の関係を整理し，鋼材の成分分析や組織観察などの結果を基に精錬法や製造場所を推定し，使用された鋼材が海外輸入品か，もしくは官営八幡製鉄所の製品かの可能性について考察した．