高Crフェライト系先端耐熱鋼の溶接熱影響部に見られるType IV型クリープ損傷を発生する組織の特定と生成機構

摘要

フェライト系耐熱鋼溶接熱影響部に特有の課題であるType IV損傷の発生機構解明を目的として，W含有9％Cr鋼（ASME Gr．92相当鋼）を実験室溶解で模擬して対象材料とし，Type IV損傷の発生部位を形成する組織について詳細に検討した結果，以下の結論を得た。 Type IV損傷が生じる組織は，溶接時の熱影響によっで一度Ac_3変態点直上の1000°C近傍に再加熱されることで生成した「細粒域」であることを実験的に明らかにじた。 透過電子顕微鏡観察により，溶接後熱処理付与後では細粒域の転位組織は回復サブグレイン組織であって，ラスマルテンサイト構造を有していないことが認められた。 回復サブグレイン化した組織はHAZ外縁の受ける熱サイクルによってAc_3変態点直上に加熱されることで一度完全にγ組織となり，その後短時間のうちに再度ラスマルテンサイトに焼入れられることに起因する炭化物の不完全固溶，すなわち低温変態時の固潜炭素の減少に起因して焼入れ性が低下した弱マルテンサイト組織が，その後のPWHTにより短時間のうちに回復して変化した組織であると説明することができた。