クロム添加による極低炭素冷延鋼板の降伏強度変化

摘要

薄鋼板はプレス成形で三次元形状に加工された後，構造体の一部に使用される。構造用材料として求められる強度は主としてC量により制御されるが，さらに機能を付与するために合金元素を加えることがある。Crは薄鋼板に熱処理材の機能である焼入れ性や環境材料の機能である耐食性を付与することから，1％未満の微量から数十％まで構造体の使用目的に応じて添加量が選択されている。このCr添加薄鋼板のプレス成形時および成形後の構造体の強度を目的のものとするためには，Cr含有量が機械的性質に及ぼす影響を正確に把握していなければならない。極低炭素冷延鋼板にCrを添加した場合，Crによる固溶軟化が認められるとの報告がある。一方で，12％以上のCrを含有するステンレス鋼は明らかにCr無添加鋼と比べてCrの固溶強化で高強度化している。このように薄鋼板の強度に及ぼすCrの影響については報告ごとに傾向が異なっている。