開放系大気CO_2増加（FACE)実験による作物の高CO_2応答の解明

摘要

大気CO_2濃度は長期間280mumol mol~(-1)で安定してい たが，産業革命以後上昇を続け，今世紀半ばには550mumiol mol~(-1)に達すると予測されている（IPCC 2007).大気CO_2 濃度の上昇は，植物とりわけ作物生産に大ぎな影響を及ぼ す.大気CO_2濃度の上昇に対する植物の応答は，直接的 には光合成速度と気孔の開度に影響を及ぼし，その影響は さらにより大きな時間, 空間的なスケールへと波及する. 植物の高CO_2に対する応答は，光合成経路（C_3, C_4,CAM) や種.機能型（functional type)によつて異なる.一般に， 低いC02濃度に適応したC_4， CAM植物は高CO_2に対す る影響が小さいのに対して，C_3植物は高いCO_2応答を示 すことが期待されている.このため，本稿では植物の中で もイネ.ムギ.ダイズなどC_3作物の高CO_2応答を主とし て取り扱う.なぜなら，作物のCO_2応答およびそのメカ 二ズムを明らかにすることは，将来の生産量予測および適 応技術, 品種の開発において必要であり，食料安全保障の 上で重要となるためである.