生分解性高分子材料ポリ乳酸の医療および工業的応用-生分解性高分子材料の放射線架橋

摘要

21世紀を迎えた地球上に住む我々人類は、石油エネルギーの枯渇問題と地球環境汚染問題を深刻に捉えざるを得なくなった。 これらの問題解決に関連して、近年、バイオマスを循環利用でき意植物由来高分子材料の工業利用に期待が向けられている。 工業的には植物を原料にした素材の採用が拡大しているが、これは従来のような土中や水中での生分解性を期待するのではなく、石油代替原料と温暖化ガスの削減効果を重視して実用化が急速に進んでいる。 ところが、ヒトの体内で使用される医療用生体材料としては、疾患の治癒に伴い生体内で分解し最終的には代謝され排泄されかナれば用を足さない。 この生体内分解吸収性の生体材料が臨床応用されたのは今から約30年も前に遡り、ポリグリコール酸（PGA）の吸収性縫合糸が最初である。 その後、我々は世界に先駆けてポリ乳酸（PLA）の吸収性骨固定材を開発し整形外科、胸部外科ならびに口腔外科の分野で、また乳酸/グリコール酸共重合体の多孔質メンプレンの歯周病治療膜（GTRメンプレン）を開発し歯科、口腔外科分野で広く臨床応用されでいる。さらに最近、再生医療の一分野である組織工学領嘩において、生体組織再生のための足場材科としての生体内分解吸収性の高分子材料、特にポリ乳酸系高分子材料が注目され、それらの研究開発が活発に進められている。