薬物送達システムにおける放出制御と生体材料

摘要

近年の創薬技術の進歩は目覚ましく、短期間に有用な生物活性を持つ化合物をスクリーニングすることが可能となった。 しかし残念なことに、強力な薬理効果を持つ画期的な候補物質が発見されているものの、生体内にほとんど吸収されなかったり、速やかに分解を受けたりするために、開発研究から脱落する場合が多いのが現状である。 そこで、薬物の生体内での動きを精密に制御する薬物送達システム（Drug Delivery System、DDS）と呼ばれる新しい投与技術が誕生した。 DDS開発においては、種々の薬物移行過程の中で、薬物の放出（図1①）、消化管や皮膚などの吸収障壁の通過（図1②）、および標的部位への送達（図1③）が制御の対象となる。 DDSの一般的な手法としては、製剤修飾と薬物に化学修飾を施すプロドラッグ化がある。 プロドラッグ自体には生物活性はないが、体内で酵素的、化学的変化を受けて、元の薬物に戻り効果を発揮する。 中でも、薬物の放出を制御する製剤や吸収性を改善したプロドラッグは広く実用化され、さまざまな疾患に対して治療効果をあげている。