特集：材料技術トレンドを読む工業材料キーワード50－フラスチック光ファイノト

摘要

プラスチック光ファイバー(POF)は，1960年代に開発され，1970年代の研究の成果により低損失化が進み，短距離での通信が可能となった．機器間，機器内や家電インターフェイス用途に加え，最近では，ダイムラーベンツ車への採用が決まるなど，車載用途へも広がりを見せている．一方，世の中はIT時代を迎え，インターネットの目覚しい発達から，さらに次世代のブロードバンド時代に移行しつつあり，高画質動画映像などの大容量の情報を自由にオフィスや家庭にある端末で扱えるようになる時代がすぐそこまで来ている．映像など大量の情報をパソコン，オーディオ，ビデオ，ゲーム機などの情報端末の間で自由にやり取りするためには従来の電話線や同軸ケーブルでは限界があり，今まさにギガビット／秒程度の大容量伝送が可能な光通信によるネットワーク化が求められている．しかし，長距離幹線系で使用されている石英光ファイバーは径が細いため接続コストが高く，しかも折れやすいため，施工コストが大半を占めるオフィスや家庭内での利用は進んでおらず，接続が簡単で柔軟性があるPOFが注目を集めている．従来のPOFはアクリル樹脂をコア材としたStep Index (SI)型で，伝送可能距離が短く，帯域も100MHz·km以下であり，利用可能な光源が，通信分野では利用されていない波長650nmに限定されるなど，今後のIT時代に対応していくには性能的に不十分である．旭硝子が開発·製品化した全フッ素光学樹脂光ファイバー「ルキナ」は，旭硝子が世界に先駆けて開発した全フッ素光学樹脂をコア材として用いることで，従来のPOFに比べ伝送距離を伸ばすと同時に，コアの屈折率分布を慶應義塾大学·小池教授の発明によるGraded Index (GI)型にすることで，高帯域化も併せて可能にした．