PAN系炭素繊維

摘要

軽量工業材料として重要な比強度，比弾性率に優れたポリアクリロニトリル（PAN）系炭素繊維について，用途展開の現状と今後の展望を中心に報告する。 PAN系炭素繊維の基本的な製造方法は，PAN繊維を空気中，200～300℃で加熱して架橋構造とし耐熱性をもたせた後，不満性雰囲気中，1，000～3，000℃で加熱して炭素化するという技術である。 約30年前に工業生産が開始されて以乳現在まで基本的には変わっていない。PANを炭素化した際の収率は約50％であり，約半分が飛散するというドラスティックな反応が起こるため，その反応の制御に本製造技術の難しさがあるが，ポリマー，前駆体繊維および加熱条件を最適設計することにより，高強度·高弾性率化といった高性能化が工業生産開始以来，約20年間進んだ。 この間に，強度は3GPaから7GPaへ，弾性率は200GPaから700GPaへと数倍の向上が可能となって多品種化が進み，より軽量化が進むとともに，用途に合わせた最適設定が可能となった。