圧力設備の破損モードと応力（第3回）－進行性変形·ラチェット変形,疲労破壊(1)

摘要

8．1進行性変形·ラチェット変形の特徴ほとんどの圧力設備は，発生応力を降伏強度や引張強度と比較する，いわゆる強度基準に基づいて設計することによって構造健全性(structural integrity)を十分保つことができる。 しかし，ある条件下においては，運転の線返しとともに構造物の変形が進行し，構造健全性を損なうことがある。 この変形は，高温におけるクリープ変形とは異なり，変形が時間に依存しない(time in-dependent)温度領域においても生じる。 ラチェット変形とは，ラチェット機構からも類推できるように，荷重が変動するたびに一定方向に変形が進行する現象である。 最も典型的なものは，サーマルラチェット(thermal ratcheting)と呼ばれる現象である。 この現象は，一定内圧の下で大きな熱負荷が繰り返される原子炉燃料被覆管や負荷変動の激しい発電用ボイラーチューブの直径が運転の繰返しに伴って次第に膨れるという現象によって明らかになった。