膵癌の術前·術後補助療法の進歩と今後の展望

摘要

要約：膵癌診療ガイドライン2009年版では，2007年4月までの文献に基づいて，膵癌の補助療法の推奨度について，術前治療（化学放射線療法および化学療法）：グレードCl，術中放射線療法：グレードC1,術後化学放射線療法：グレードC1,術後化学療法：グレードВと提唱した。2007年4月以降の報告をみると，術前治療に関する第Ш相試験はなく，実臨床として術前治療を推奨できる新たなェビデンスはない。術中放射線療法については，わが国で多施設第Ш相試験が行われたが，全生存からみてその有効性は示されなかった。術後化学放射線治療についても，有効性を示す新たなェビデンスはみられなかった。術後化学療法については， わが国からゲムシタビン（以下GEM)が無病生存率を改善させることを示した第Ш相試験が， またヨーロッパから，GEMと5-FU+ロイコボリンが全生存からみてほぼ同等の有効性があることを示した第Ш相試験が報告された。現在，GEM,フッ化ピリミジン系薬剤，分子標的薬を用いた術後補助化学療法の第Ш相試験がわが国やヨーロッパで進められている。今後，術前治療にも目をむけつつ，補助療法の臨床試験を一層展開していく必要がある。