急性膵炎で発症した非露出腫瘤型早期十二指腸乳頭部癌の1例

摘要

症例は47歳,男性。 主訴は腹痛。 2000年11月,腹痛を主訴に当院を受診。 Stage2の重症急性膵炎の診断で入院となった。 ERCPでの肉眼的所見では乳頭は軽度に腫大するも腫瘍は認めなかったが,造影すると主膵管内を主座とする25 mmの乳頭状腫瘤影を認めた。 非露出腫瘤型十二指腸乳頭部癌と診断し, PpPDを施行した。 高円柱状の異型細胞が主膵管内に充満する高分化型腺癌で, Oddi筋内への浸潤はなく,早期乳頭部癌と診断した。 また切除した膵実質の腺房細胞は著明に萎縮し間質が広がっていた。その間質ば浮腫が主体で,結合織の増生や,炎症性細胞浸潤はほとんど認めなかった。 以上より本症例の腹痛は腫瘍による急性膵管閉塞に起因する膵炎の可能性が大きいと考えた。 十二指腸乳頭部痛が急性膵炎で発症することは比較的稀である。 本症例は主膵内に鋳型状に連続する特異な形態で発育したために,急性膵炎で発症したと考えられた。